2014年3月久々の収録。アップに1年もかかってしまい申し訳ありません。
ギターの新しい構造など久々の収録でたまっていた事柄が多くてテーマが
しぼりきれない部分もありましたが・・・
ま きょうはちょっと目先を変えて、ギターの新しい構造というか、
素材というか、そういうところの話をしたい…実は僕はこの辺りの
事情に疎いので教えてほしんだけど。
ダブルトップとかワッフル(ラティス)とか。
さ 新世代のダブルトップというと…うちで扱ったので新しいのは
シュレンパーがあったのだけど売れてしまったんですよ。
ま シュレンパーというと、普通はダブルトップじゃないよね。
さ シュレンパーも新しいのが入ったんですよ。
な それがハイブリッドで。
さ 部分的にノーメックス入り。
ま 部分的というと?
さ たしか4ヶ所に分けて、
な 部分的に入れてるんですよ。
ま 表面板自体は左右対称の二枚なんでしょう?
さ 普通に二枚剥ぎですよ。だから表向きは中でどこから見ても
全くわからない。二枚剥ぎを二枚重ねにしたサンドイッチの
中にハニカムが入っているから。
ま じゃ、他のハニカムじゃない部分はどうなっているの?
な 他はやっぱりサンドイッチなんじゃないですかね。
つまり二枚の板を片面部分的に薄く削ってハニカムを入れて。
さ 何カ所か…
ま 他はただ重ねてある合板構造とか。
さ そうです。
ま 部分的に削って。で、力木はないわけ?
さ 力木は普通にあります。
ま あ、そうか。ハニカムのダマンみたいなやつは、あれは力木はあるの?
さ 力木あります。
ま やっぱりあるの。
でもまあ表面板の全部をハニカムにするならともかく、部分的にするとは、またシュレンパーは凝ったことやったね。
さ そうなんですよ。結構面白い楽器でしたよ。杉で。
な 楽器としては成功している。弦がバテていると全然だめですけど。
ま ああ、弦の状態がストレートに出るの?
な ええ、弦を変えたらパリッとして。
さ ダブルトップといえば有名なのはマティアス・ダマンなんだけど…
(「Fine Spanish Guitar」をめくり)ダマンは出てないな。
スモールマンは載ってますね。
ま こうして見るとスモールマンは表面板の上側はワッフルじゃないん
だよね。
さ そうですね。下の方だけですね。
な 上はもうガチガチに固めてますね。
ま うん、そうみたいね。上の方の振動は期待してないということか。
力木はアコースティックの世界ではブレーシングとかいっているよね。
ワッフルほどではないけどX字形になっているのがけっこう多いよ。
な ほとんどXじゃないですか。結構ごついですよね。
ま うん。いかにもフレームだよね。建築物も三角形が強いそうじゃない。
だから東京タワーでもスカイツリーでも三角形かX字形の集合だし、
それから耐震強度のための補強工事にしても、あれも斜めに入れるよね。 Xの形に窓の処に入れていく。後からやった工事はみんなそういう様に
なっている。
な なんか不細工ですよね。
(現代ギター誌2012年9月号を開く)
さ これとこれ…ダブルトップ方式。
な 真空バックにして圧着する。
ま え? 中、真空なの?
な いや、接着の方法が。ビニール袋に入れて空気を抜く。
ま あ、そうか。
(「ま」が9月号を見ている間にギターを並べる)
さ 川田さんのココボロとマダガスカル、出しておくか。
松井さんのシープレス、マヌエル・ラミレス、ラツク、フレタ…
(記事を見ながら)
ま なるほど、弦の真下の所は削らないで板を残すんだね。
弦の真下と駒のところは…
な シュレンパーさんはどこでしたかね。
さ どうだったかな、はっきりは覚えてないけど…下だよ。
な センターにもあった様な気が…
ま 部分的に使っているって、どの部分に?
さ 4ヶ所。ドイツ人だからこれは企業秘密でとジョークで返せばいいのに真面目だから…
な 駒の付近。
さ この辺りだといっていたね。駒を挟んで左右。
ま ああ、なるほど。駒から一直線に弦の真下という所には?
な 残してましたね。
ま しかしこうしてみると使っている人(ギタリスト)は楽器に
特段興味がなくて、純粋に音で選んでいるみたいだねえ…
ハニカムの音というのはよく分からないのだけど、あれは伸びるの?
音が。パンと鳴るような気がするけど。
な 立ち上がりは早いですね。
ま カリカリッという音じゃないのかと思うけど。
な 僕が思っているハニカムの音のイメージは、立ち上がりがパーンと早い、そういう音楽の素材を感じますね。
ただ、よくいう、細い音というのとは反対の位置にある、
中がいってみれば空虚な…軽い。
さ 詰まってないよね。
な 軽くて平面的な音。そういうイメージがある印象です。
ま そこでまた演奏家の話になると、そういう音にはそういう音楽作り
があるね。そういう音を出すためには演奏家はそういう音を前提に
音楽作りするわけだし。
さ まあざっくり、モノトーンが多いですね。カラフルではない。
ま そうかな? そう?
さ 僕はそう思いますね。そういう楽器ね。
ま ああ、楽器ね。
さ ええ、楽器ですよ。最たる物はスモールマン。
ま スモールマンはそういう音だし、ジョン・ウィリアムスもモノトーン
だというのはわかるけど、でも、デヴィッド・ラッセルは色彩感ある
よね。演奏に。
な それがギルバートの時代とダマンの時代で違う。
さ 僕はデヴィッドと直接話したんですけど、カラフルさはギルバートの
方があったといってました。
僕は酔った勢いで「デヴィッドはダマンに変わって音のカラフルさが、
もちろん素敵だけど、24色の色鉛筆が12色の色鉛筆みたいだよね」
という話をしたことがあります。僕は最近のデヴィッドの演奏聴いて、
素晴らしかったけど、やっぱりそこに僕は不満を覚えましたね。
色が…
ま そうか、やっぱりそうなるんだ…
さ 彼は最高のあの種の楽器の遣い手だと思う。
でも彼をもってしてもあれかと…
ま ジョン・ウィリアムスはもともと3色位の人だよね。
だけど悪いいい方をするとコンサートホールで24色を使って演奏
すると何をやっているか分からなくなることがあるよ。
自己満足の世界になってしまって。だから3色位でくっきりと
やった方がメリハリがつくということはいえると思う。
さ ハニカムの特徴、あとは立体感が少ない。音は大きいけれど、物理的に。遠近感がないというか…
ま 遠近感って面白いのだけど、古いギターは奥行きがあるんだよ。
表面板が小さくて奥行きのある楽器って。あれなぜか知らないけど、
そういう音が出る。
さ なるほどね。
ま あと弦長とかテンションでいうと、テンションの高い楽器はパンっと鳴るけど伸びは少ないんだよね。
さ シュテファンのこの間のハイブリッドって、ちょっと音の伸びが少なかったね。
な システムの音はかなりしていましたよね。
さ 瞬発力とバランスとはあるのだけど、伸び、すーっと細く、
というのはない。
な ああいうシステムの音としては角はありましたね。
さ シュテファンはやっぱりその辺りの事話したのだけど、途中から
難しい話になって、お酒と英語力も足りなくてなかなか理解でき
なかったのですが、彼はそういう部分ダブルトップでやったのは、
表面全体をそのシステムにした時の弱点というか、自分の中で
気になる部分があって…
ま じゃ、全面ダブルトップもやってみたのだね、当然。
1本の完成品の前にはいくつかやっているのだね。
さ 彼だったら絶対やっていると思う。
な そうでなくては絶対そういう発想は出てこない。
さ やったから出たのだろうね。ここはこうして、ここはそうしないようにすると音が、サスティーンがちゃんと得られるしと。
さ これだけいわれているけど、みんなが両手を挙げてそれを使わないよね。お金がかかる? そのシステムがね、いい材料の買えない若手はそういうのに走ってもおかしくないと、でもなかなかみんなそうしないよね。
な 余裕がいるのではないですか、一つ態度を確立するまでもなく、
ここだと思ってから。
さ 大ちゃんもいっていたけど、これからは材料といってもお金もないし、
手に入らないのだからこういう、もちろん全部がそれとはいわないけど、 そういうのでもっと考えたらいいんじゃないの、と。
な そのシステムにするにしても、それ以外は全部同じ作りじゃないですか、だからそこが自分のスタイルを極めなければ…ある程度のところに持って行かないとできないと。
さ 相当技術がいるものね。表面板を作るのに。
ま さっきもこの本見てたら、そこの所をくり抜くよりも接着が大変だと書いてあるね。
さ 真空にして…だからそこの所にノーメックスを入れない単純なダブルトップもあるんですよ。キム・ヒホンさん。
な あれはそういうシステムというよりは、違う意味のハイブリッドでした。
ま それは単に弱くなるだけじゃない。あいだ空洞の薄い板でしょ?
な いや、空洞もないはずです。
さ 単純に、合板。杉・松とか。
ま あ、そうか。
な 結果、でも出てきた音は、その表面板の音としては分からない。
ただその人がやりたかった事はバランスが、とても大事にしている
のだと思うけど、均一な音が出て伸びがあってという、そういう
音造りをしたいのだろうな、というのは分かりました。
さ 裏はスモールマンみたいになっていたっけ?
な 重かったですね。
ま スモールマンの横裏というのは一枚じゃないんだよね。
合板なんでしょう? 何層も重ねた。
な この間お店にあったリッサラークなんかは。
さ オーストラリアの全く同じシステム。あれはあれでそういう音だった。
システムの音。
な システムって、最終的にはその人の判断。
さ ああいう楽器ではあれはよくできていた。
な その差ってどこから現れるのだろう。
さ 今井さんはああいうの好きではないのですが、その中ではスモールマンは良質だっていういい方してました。
ま この間、例のガラスのギターね、あれを使ってチャリティ・コンサートやったらしいよ。新聞に載っていた。あれは重さ3.8キロだっけ、3.5キロだっけ、でもあれができるまでの苦労は何も記載されてないのだけど(笑)
な 影の製作者が…それを支えた人達が数多くいて。
ま あれは工場が茨城にあったのかな、で、震災で工場が壊れて、
そしてそれを復興して作ったという所が話題らしい。
な あ、なるほど。
ま ガラス自体はいい音するんだよね。グラス・ハーモニカってあるでしょう。ポワーンとすごくいい音するよね。あれは空気そのものが鳴っているけど、ガラスも鳴ってるんだよね。それもほとんど正弦波に近いだろうね、ハーモニクスみたいな音。
な なるほど、あんまり倍音がなくてシンプルな波形でしょうね。
ま うん、倍音はほとんどないと思う。で、すごく伸びるよね。ただグラスみたいに薄くしたら弦楽器にはならないけどね。
な たまに振動で割るというのがありますね。共鳴させてその振動に耐えきれなくて、だから音量を上げると割れてしまうのでしょうね。ガラスはあまりしならないから。
ま ボトル・ネックってあるでしょう? エレキ・ギターのスライド奏法で。あれは文字通りガラスのボトル・ネックが一番いい音がするんだってね。ただ、すぐ磨り減るんだってね。弦に負けてガラスの方が減ってしまう。ギザギサになっちゃう。
な そうなんですか?
ま うん、それで金属のを使う事が多い。
さ 耐久性の問題なのですか…
ま 音自体はガラスの方がいいのだそうだ。
な ガラスの方が軽くて使いやすい様な気がしますが。
ま そうかも知れない。
さ ガラスのギター、あの会社は本社が神田にあるのですけど、
博物館みたいになっていてヴァイオリンだのいっぱいありますよ。
今まで結構ギターの前に作っていたみたいですよ。
な 琴もやってますよね。
ま 琴!! 琴の大きさ作ってしまうと結構重いだろうね。
普通、琴って軽い桐を使うんだからね。
な ガラスで作ったら持ち運べない…
ま ガラスどころかあれをローズウッドで作っても運べないね。
主に女の人だし。
な きれいな着物着て…見たことはあるけど持った事はないですね。
ま 琴も今すごいものあるね。もともと13本だっけ?
今すごい弦の多いのがある。
さ 多弦?
な ただでさえ多弦なのに。
ま すごいのあるよ20何本もある。弾くのも両手で使ったり。
な 両方爪で?
ま 両方爪で。現代演奏というか…モダン琴?
さ ありますね。
な 流派によっても楽器が多分…
ま 違うんだろうね。新しいのは派というのか、なんというのか、どちらかというと異端の方かも知れないし。
な 進化をしているという事ですね。
ま 確か反対側も弾いていたと思う。
な 駒(琴柱)の反対側?
ま そう。琴って面白くて弦の遊んでいる方がよっぽど長いんだよね。
短い方を普通弾く。それを長い方も弾く。超低音。
だから結構調弦はシビアだよね。両方合わなきゃ、テンションと位置で調整して。
…ところでガラスに戻るけど、エレキ・ギターだったらガラスの使い道はあると思うんだよね。
さ エレキ・ギターって、ガラスのってそういうクリスタル・ボディってありませんでしたっけ?
ま ある?もともとあるのかな?
さ ガラスだったかアクリルだったかわかりませんが。
ま 見た目はガラスとアクリル似ているけど音は全然違うよ。
な アクリルだったら響かなさそうですね。
ま アクリルだったらボコッだよ。
昔、ガラスのレコード・プレーヤーがあった。本体のボードがガラス製。
それからプラッター(グルグル回るところ)の上に乗っけるシートが普通はゴムだけどガラスでできてる。そういえば一時シートが色々な物ができて流行ったんだ。金属だとかセラミックとか、それぞれ素材の音がするんだよ。
な …クリスタル・ギターで検索するとたくさん色々出てきました。エレキ・ギターが、色んな機種がすでに市販されて…ハードオフとかに出ている。
ま へえ、ハードオフに出るくらいあるんだ。
(検索画面を見て)
ま これは…アクリルだね。ガラスでこれだけ厚いの作れば色は緑になる。
な あ、そういうものなのですか。
ま うん、光学ガラス以外は緑になるよ。
音のためというと駒の周辺辺りにガラスを埋めたら面白い物になると思うけどね。アコースティック・ギターだったら鳴らないけどマイクで拾うのだったらガラスで作ったらそれなりのものができると思う。
な 変わった音造りができますね。
ま そういえばガラスの風鈴ってあるよね。
な 江戸風鈴。
ま 江戸風鈴、ガラスだよね。
な 僕、江戸風鈴って聞いた事無いときにガラスの風鈴ってさぞかしコーンといい音がするんだろうな、と思ったら、意外にカランカランって。
ま そうそう、鈍い音だよ。
な あれは軽くショックを受けたことがあるんですけど。
ま あれはね、結構でこぼこがあるんだよ、ブランデーグラスがきれいに鳴るのは均一にできているからじゃないかな。江戸風鈴は丸く膨らませたのを一部分ポコッと割るから不規則なんだよね。だからきれいなキーンとした音じゃない。むしろきれいにチーンと鳴るのは南部鉄とか。
な ああいう風に鳴るのかと思っていたら全然違った。
つづく・・・
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7月17日 更新
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