第4回 - クラシックギター専門店メディア・カームオンラインショップ

◆　第4回

主なテーマ

サイズ、音の話

さ	大きいというのは結局音量を追求したんでしょうか。
ま	そうなんだろうね。でもボディを大きくして有利なのは低音であって、高音に関しては小さいほうがいいことが多いんだよね。高音楽器は小さいじゃないか。
さ	弦長も70年代は660ミリが標準みたいなところがあったけど、80年ころからは650ミリが主流になっています。
ま	結局、650ミリがちょうどいいんだろうね。音量だけでなくて、テンションによる音質の違いがあるんだよ。弦を張り替えて正規の音程付近で動かしてみるとよくわかる。ハイテンションだと音の張りも強くなるけど、やや一本調子にもなるね。伸びもなくなるし
さ	今井さんも言っていましたね。ローテンションのほうが表現の幅が広がる場合があると・・・。
	今井氏の発言
い	前にドメニコーニの時もそうだったけれど、パヴェル・シュタイドルが工房にきてくれた時に、ちょうど海外に出す640ミリの楽器と650ミリと両方を見せた時に、二人は弦長の短い方が楽器としてのトータルで性能が高いって云うんだよね・・・。実際に弾いてみてもらって気づいたのだけれど、あの人たちは音楽の中で音色の変化を楽しむし、それを思うままにするし、特にパヴェルの場合は、左手はピアノとで云えば鍵盤の役割をしている、トータルで音楽をするときは、いかにうたうかということ考えると、ビブラートがかけやすいとか、そういうことが大切、そうすると弦長の短い、言い換えればテンションの低い楽器の方が音色が変えやすい（その分柔らかいから）ドメニコーニはテンションの高い弦はキライだと、ハナバッハのイエロー以外は使わないって・・・。柔らかい方が音を変えられるから、ギターはこっち（右手）だけで音を変えるものではないからって・・・。実際僕の楽器を使ってもらっていて感じるけれど、640ミリの方が豊かな音楽ができるの。その時までは僕自身も640では単純にいざとなった時のヴォリュームが出にくいとか、思っていたのだけれど、あの人たちの創りたい音楽は、640の方がずっといい音楽になるの・・・。
ま	うん、実は僕もこのごろいろんなテンションの弦を試してる。ところが何を張ったかわからなくなったりして・・・（笑）。
さ	弦の袋をケースに入れて置くのが一番いいですよ

	「M」のカツサンド（ヒレ）でブレイク。
ま	こりゃ柔らかいね。僕は何かというと「やわらかーい」「おいしいー」というのは嫌いなんだけど。これは柔らかくておいしい。でもほんとはロースのほうが好きだったりして。
な	この辺のとんかつ屋では、秋葉原の「MG」とか、
ま	須田町の「KM」もいいよ。大盛りのカツ丼がすごい。
な	あ、そこで普通のカツを食べた気がする。
ま	ちょっと遠いけど新橋まで行くと「ER」はいいよ。

	閑話休題

さ	以前（70年代）はスペイン的な音とか、ドイツ的な音とかって云って、その代表がハウザーと云われていましたよね。ハウザーしか一流の楽器は紹介されていなかったですね。
ま	ドイツの一流のものといったら、当時西、東だからハウザーは西ドイツ代表・・・。
さ	ドイツ的なものとして、ワイスガーバーというのもありましたが、あれはまた全然違いますよね。
ま	ワイスガーバーは違うねえ。
な	ワイスガーバーというのは、どういう楽器なんですか？東ドイツの方で？
ま	あれは、もう少し色がついている。
な	音に色が？
さ	あの頃ハウザー2世をさしてドイツ的な音・・・透明でといって・・・。
ま	そう、無色透明、真っ白。それに対してワイスガーバーは新品のうちから何か味があるような音がする・・・。今にして思えば新品といっても相当古かったという・・・。
さ	戦前ですよね。
ま	そのものを完成させて作ったとかいわれている。
さ	息子がね。
な	ご本人は？
さ	リヒャルト・ヤコブは・・・
ま	リヒャルト・ヤコブは30年代に亡くなっているでしょう。
さ	ハウザー1世と同じ様な年か・・・、19世紀の生まれですね。
ま	ただ、マルティン・ヤコブは実際には作らなかったと聞いたけど。
さ	サインしただけ、息子ですよね。
ま	職人がいたんだよ、作っている。
さ	ワイスガーバーって云うのは、弦楽器の街ですよね、マルクノイキルヘンのあたりですよね、有名な産地というか、製作者が集まっていた。
ま	あの頃、西ドイツの安定して入る楽器と云うとエドガー・メンヒがあってね。
さ	メンヒが知られて、あれは特異な楽器でしたよね。70年代に入って珍しい楽器でした。
ま	70年代のメンヒは50年代のメンヒよりもずっと優しい楽器になっていたね。50年代のは固いね。
さ	ハウザーとまた違いますね。
ま	う〜ん、ハウザーより細いね、やっぱりハウザーの方が味がある、メンヒというのはシャープだよね、ただちょっとしゃりしゃりで。
さ	70年代のメンヒはそんな感じではないですね。
ま	70年代はポロンという感じだね。いい音だよ、ちょっと類のない。あれはちょっと変わった楽器でね、弾き込むにつれてむしろ硬い音も出るようになる。それとハウザーが似てるとか似てないとかいっていた。でもあの頃そんなにいい楽器っていうのは見てないし、そんなにハウザーを解るほど見ていなかったし。
さ	何でもドイツというとハウザーが基準でしたからね。でも云うほどには見ていなかった・・・、数も無かったし。
ま	ただ、セコビアが使った楽器で有名だから、名前はみんな知っていたんだよ。
さ	まあ、一部知っている人で、セコビアが使ったのはハウザーで、今出ているハウザーとは代替わりしていると云うことは知らない事が多かったでしようね。
ま	あとセコビアのラミレスだって、マヌエル・ラミレスって伝記の中にあって、今使っているのはホセ・ラミレス、親子ではないということを知らなかったりね。
さ	情報は70年代はまだ無い時代でしたね。音の話もね、あの頃白い楽器と云ったら、ハウザー、メンヒ、ロマニロス・・・、ロマニロスも来始めの頃は白かったですね。
な	白い楽器？
さ	表面板の事ね、白い楽器、赤い楽器って云うのだけどね。
ま	スペインの楽器が最近は割と白いの多いでしょ？、プロの塗り士のは。スペインの楽器というのは、昔からこのブーシェの色している。黄色味かかった・・・アグアドの60年代ももう少し濃かった。フレタの60年代の松ももう少し濃い。そういう色がスペインには多い。真っ白と云うのは少なかったね。これは時代の流れだね。今はケヴィンとか、日本では今井さんも白いし。
さ	今井さんは今、またかなり黄色い・・・濃い色してますが。
な	じゃこれも（ハウザー36年）昔は白かったのですか。
ま	そうだと思う、これは焼けてこうなったんで（ほんのりとクリーム色）、本来はハウザーは白い。ブーシェはもう少し黄色い。
さ	塗装のもとからの色がありますしね。
ま	こうして見るとブーシェのヘッドってハウザー（1936年のハウザーはふたつに分かれた形をしている。なおこの形はときどきみられる）から持ってきたようなところがあるね、真ん中だけ。ブーシェのヘッドは特に凝ったところがない、ラミレスのヘッドはこれは傑作だよ。アグアドの様に彫った物もある。
な	今井さんのも。
ま	今井さんのも彫っているね。
さ	今井さんはやはりアグアドが根底にあるのですね。

	本（ファイン・スパニッシュ・ギター）、雑誌（現代ギター）をみながら、ヘッドの形について、

ま	これ割といいと思う、ミゲルの。スペイン的な感じもするし。それとサントスのヘッドね。アルカンヘル、バルベロ・・・ドミンゴ・エステソはこの形（サントスと同じ2つに分かれたもの）は珍しくて、アルカンヘルの様な格好をしているのが多い。
さ	このサントス（T氏の）は凄いですよ、冠が・・・トーレスのワッペンみたいな・・・金属プレートがついている。
ま	ラミレスにもあるね。・・・メンヒはバルベロに習った様なところがあるでしょう。
な	バルベロのヘッドに似ているのですか？
ま	バルベロも頭の写真どこかにあったね。
さ	ああ、ありました。
ま	34年、ラベルも（メンヒと）似てるね、サントスの所に入る前だ。

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