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● 鈴木大介ギターエッセイ パート48(2004年8月13日号)

8月中旬からはサイトウキネンで松本に詰めている大介さんです。凄いスケジュールの中で、不眠不休で
エッセイや、お知らせが送られて来ています。愛用Macもパンクしてしまったらしい・・・・・・(;_;)


こんにちは。
8月の後半はほとんど松本暮らしの鈴木です。7月は村治奏一君が2枚目のアルバムを発表、演奏会もありましたし、テレビ(「題名のない音楽界」)にも初出演しました。
もう生徒さんとは言えないくらい、自己育成能力を身に付けて、会うたびにどんどん成長しているので、頼もしい限りです。とってもいいやつなので一応まだ僕のことを「先生」って呼んでくれていますが、最近は僕が彼に教えてもらうこともしばしばで、「ねーねー奏ちゃんこれどうやって練習してんのー?」でただで教えてもらってばかりでは申し訳ないので、少しでも彼に何か新鮮な情報を発信しつづけられるよう年の功最大限に発揮して頑張らねば、と思いつつ夏バテ気味です。。とほほ。
しかしそんな疲れもここ松本のテンションの高い環境とおいしいおそばで吹き飛びそうです。「ヴォツェック」もすごい衣装で頑張っています。もう9月からどっかんどっかんです!

なにはさておき、お待たせいたしました。
ギターエラボレーション第2回 Guitar Perspective vol.2 幻想illusionのプログラム発表です。

バッハ:組曲BWV1010(原曲 無伴奏チェロ組曲第4番)

トゥリーナ:ファンダンギーリョ
      セビリャーナス
タンスマン:4つのテンポ・ディ・マズルカ
ベリオ:セクエンツァ
モンサルバーチェ:3つの幻影のファド
ゾーヴァンディ:夢

今回のテーマは、「幻想」であると同時に、「イリュージョン」でもあります。バッハの組曲の、プレリュードに見るファンタジックな要素、クーラントとブーレの柔軟性豊かな軽やかさ、ジーグの快活な響きの運動性、などからイメージを得て、透明で立体感のある、移ろいゆく色彩と音響の幻影を楽しんでいただけるような選曲です。
民族的なテーマを抽象化することによって、より時間や空間を超えた憧れを表現している作品が中心となっていることも特色です。「抽象化」、というのは、「普遍化」と似ています。一見シンプルな民族音楽でも、それぞれ固有のリズムの取り方や、約束事があります。クラシック音楽を演奏することが、時には妨げにさえなってしまうほど、奥が深いものが少なくありません。しかし、それらの伝統的な決まりごとを、ほんの少し壊して、輪郭をはずしてしまうことで、地域的に限定された思考を超えて、美しさの純度を高めていくことができる場合があります。
今回の「イリュージョン」で演奏される作品は、それぞれの作曲家が自分のルーツをしっかりと見据え、民族や時代に依拠しつつも、その縛りを超えた何かをつかまえようとしたものだといえるでしょう。逆説的ですが、自らの血の文化に立つことによってのみ、それは可能なのかもしれません。世界中で絶えることのない争いごとや憎しみあいを考えるとき、実はそのようなことを身近に感じていた作曲家の音楽が、夢見るような幻想の華を咲かせている、ということを感じていただけたらと思います。
ちなみに。今回は前回を聴いていただいて「休憩がなくてよかった」という方と「休憩してください」という方の両方のご希望をかなえさせていただいてます(?)。

さて、以前予告させていただいた新しいCDの発売も9月8日に迫ってまいりました。

「北の帆船」

 

上記の「イリュージョン」のテーマを、鈴木大介自身が演奏のなかで考えた作品、ともいえるかもしれません。

林光先生のギター協奏曲は、沖縄やアイヌを含めた、広い意味での日本の風土に根ざす、素晴らしい作品ですし、フェビアン・レザ・パネさんがバリ島の音楽に影響を受けて書いた「織りなす魔法の踊り」も是非聴いていただきたい作品です。近藤嘉宏さんのピアノも神業です。その他のギターソロの作品は、じつは録音されている曲の3倍くらいのなかから選び抜いた作品たちです。

アルバムの取材に行ったバリ島での写真(いつ行ったんだ!!)をおまけでご覧下さい。

タナロット

カフェアルマ

アルマの農婦さん

ネカ美術館